今月紹介している玖瑰大益のように、'90年代後半から'00年代前半に作られた孟海茶廠のプーアル茶は色々な「色」で名付けられています。
最初につくられた「色」大益は紫大益(=玖瑰大益)ですが、それ以降は紅大益が基本となり、それ以外の「色」は特別な大益として作られています。
パッケージにレシピ番号が書かれるようになるのは2006年からのことで、それ以前のプーアル茶は外見からどのようなプーアル茶であるのかを見いだすのは難しく、パッケージの微妙な違い、そして試飲などによってそれぞれの違いを判断しています。
ということで、今回久しぶりに
金大益を試飲。
サンプル用に一枚崩してあるのですが、半年ほど前に戸棚の整理をして以来見かけなくなっていました(笑)。今回「色」大益の紹介ということでここで飲まずにいつ飲もうかと、箱という箱を開けて探し出しました。
苦労して探し当てたという訳関係なく、やはりすばらしいプーアル茶です。
湯を注ぐとふわりと陳香が漂います。ほのかではなく、はっきりとした陳香です。
半年ぶりに淹れる金大益は図らずも熟成が進んでいて思わずにやりとしてしまいました。
水色は一層濃く、熟成の進んだ蜜香にほのかな煙味があり、味わいに力があり、やはり銘茶の貫禄です。茶気とバランスを取るまろやかさは進み、茶湯は濃く濃厚な味わいがあります。
金大益は2003年に作られたプーアル茶で、国営時代の孟海茶廠最後の銘茶とも呼ばれます。
孟海茶廠の銘牌といえば7542、つまり4級茶葉を主に使用して作られていますが、金大益は5号青餅とも呼ばれ一つ級の大きい5級茶葉をメイン茶葉として作られています。
一回り大きい茶葉ですが、その旨味の充実ぶりは突出しており、それは使用されている班章茶葉にあるとされています。このプーアル茶は孟海茶廠の企画生産品という訳ではなく、台湾の飛台茶商のオーダー品となります。
ちなみにこのプーアル茶の復刻品である
2010年版金大益には班章と同じ布朗山の茶葉が使用されていて、その茶気の強さや風味にも目を見張るものがありますが班章茶葉自体は使用されていません。
2011年に当店が入荷した時点では熟成は進んでいるものもまだ今後の熟成を待つという塩梅でした(葉底にも鶯色が残っていました)。が、それからさらに5年がたち熟成は満遍なく進み、茶の味わいにも葉底にもしっかりとした熟成を見ることができます。
さて、今月紹介の玖瑰大益にはもともとは紫大益として作られたプーアル茶が、経年の退色をへてピンク色になったという逸話がありますが、この金大益もパッケージの色に変化が見られます。
もともとはもっとはっきりとした金色の顔料で印刷されていた金大益ですが、経年を経て退色しその色合いは薄くなっています。
出来がよく価値も上がり続ける金大益なので、偽物が出てきてもしかるべきでしたが、この退色した微妙な色合いのおかげでなかなか偽物が作りにくいという恩恵を受けました。
それでも価値が上がり続けると偽物を作る輩はでてきます。
2012年頃から偽物の金大益を目にすることがでてきましたが、こちらははっきりとした印刷でまず間違えることはないかなという出来でした。ところがこちらも経年とともに古びた雰囲気が出てきているの間違えてしまう人もいるのかなあという感じにはなってきています(それでも明らかに違うのでオリジナルを知っていればまず間違えることはありません)。
一方の2010年の金大益にも偽物が出てきています。
こちらは大変精巧な出来でぱっと見では分りません。違いを見分けるには紙と印刷の微妙な違いから見える全体の雰囲気の違いの他に偽造防止ステッカーに違いを見ることができます。ステッカーに埋め込まれているホログラムテープの埋め込みに違いがあります。また、紫外線を当てることで見える蛍光繊維に違いが見られます。
とはいえやはり大変精巧な作りなのでよく知らないと間違えてしまうでしょう。
この辺りはかつてのアナログ印刷の時代からデジタル印刷への変化のためともいえるかもしれません。
かつて包装紙の製造は人の手で判を押すように作られていました。
次第に機械での印刷(凸版印刷)となっていった訳ですが、2003年の金大益はこの凸版印刷の時代に当たります。そのため包装紙に機械で力強く押されているので印刷の後に微妙な凹凸があります。さらに金大益には質検認証の朱色の判が手で押されています。
それに対して偽物は現代のプリントで作られているので平らな紙に大益のロゴが質検認証印とともに平面的な印刷がされているだけです。その違いは一発で見分けることができます。
一方、2010年の金大益はデジタルにデザインされ、プリントされたパッケージといえます。
そのような印刷物はデジタルで読み込んだものを色の調子を合わせて印刷すれば精巧な偽物の出来上がりです。後は紙の風合を似せればほとんど見分けはつきません。
偽造防止ステッカーとなると偽造はやはり難しくなるので違うところを探すことができますが、こちらもやはり精巧に作られています。
と話がずれてきてしまったのでここまで。