さて、当店で取扱いのある孟海茶廠のプーアル茶として最も高級なものは黄金歳月になります。
このプーアル茶は7542の作りをベースに陳年茶葉を掛け合わせて作ったプーアル茶で、70周年記念プーアル茶として人気の高いプーアル茶だったのですが、作られてから2年がたった現在ではその作りの良さが改めて評価されジワリと人気の上がってきているプーアル茶でもあります。
これは果たして最高級プーアル茶なのでしょうか。
というのも孟海茶廠にも当然最高級となるプーアル茶はあります。しかし、それが孟海茶廠の最高のプーアル茶であるかはわからないのです。黄金歳月を例に挙げると、茶葉はいいものを使用していますが、孟海茶廠が仕入れた最高の茶葉を使って作っているというわけでもありません。孟海茶廠の最高級プーアル茶は誤解を招くかもしれませんがある意味"難しい"のです。
70年にわたる最も長い歴史を持つ茶廠である孟海茶廠はその長い歴史の中でいくつもの銘茶を作り出してきました。銘茶というものは茶葉の質のみで決まるものではありません。茶葉の質は必要条件といえるのかもしれませんが、十分条件ではありません。銘茶になるためにさらに必要なものは易昌號のところでも書きましたが「お茶づくり」です。
中国の無形文化財にも指定されている孟海茶廠のプーアル茶づくりには非常にたくさんのレシピがあります。その中にはたくさんの銘茶がありますが、そのすべてが銘茶というわけでもなく、その違いは茶葉の品質だけではなくプーアル茶のデザインにも大きくよります。
プーアル茶を作る茶廠は小さなものから孟海茶廠まで星の数ほどありますが、プーアル茶のデザインという部分でいうと、やはりそれなりの規模を持った茶廠が有利になります。
規模がある茶廠はそれなりの量のプーアル茶を作らなくてはいけないので茶葉の収集が大変になりますが、その分いろいろな茶葉を集めることができるので有利に働くという一面もあります。(国艶境界がいい例です。)
ほかにもいくつもの産地から茶葉を収集しているので、それぞれの茶葉の風味の違いを考慮してデザインの最適化も可能となります。実際は産地が異なる必要はありません。プーアル茶は茶園によって味わいが異なるのでいくつかの異なった茶園から茶葉を収集してプーアル茶を作ります。
肝心なのは、これは昌泰のブレンダーの方がおっしゃってたのですが、完璧な茶葉というものはなく、たとえばある茶農家の作った茶葉は香りはいいがうまみにかけ、またある茶農家の作った茶葉はうまみが強いが甘みにかけるといったように単一の茶葉ではどうしても風味に穴ができてしまう。だからこそ茶園ごと、茶農家ごとで茶葉をテイスティングしてそれぞれの茶葉の特徴をまたそれぞれの茶葉で補完しながら味を組み立てていくのだと。
庚辰記念餅も国艶境界も単一の茶葉を使用して作られていますが、その単一は一つの茶園というわけではなく、その茶葉の風味はアベレージングされ、その産地の平均となります。もちろん平均は「質」の平均ではなく、最高級グレード茶葉の「風味」の平均をさします。
もちろん、とてもおいしい茶葉を作る産地というのもあります。そういった産地、茶園で作られたプーアル茶は希少価値も合わせて非常に高価なものになります。とはいえこういったプーアル茶はやはり非常に限られていますし、果たしてそれが本当に価格に見合ったものであるのかもわかりません。
当店でも以前、昌泰茶業が茶園を指定して作ったプーアル茶があったので仕入れを考えましたが、結局見送ったことがあります。そういったつくり方を否定しているわけではありませんし、それは一つのおいしさへのアプローチであり素晴らしいプーアル茶もあります。
当店のおいしさへのアプローチは易昌号が私の原点であるせもあるかもしれませんが、やはり昌泰のブレンダーの方がおっしゃってたお茶づくりの技術であり、孟海茶廠に代表されるレシピといったブレンディングの技術の面からおいしいプーアル茶を選んでいきたいと思います。
長くなりましが、とりあえず今回はこれにて一区切りとします。
今後もプーアルカフェをよろしくお願いいたします。