今月の
おすすめプーアル茶は庚辰記念餅です。
このプーアル茶は2001年から2003年まで作られた昌泰号の記念餅系列に当たります。
コンセプトとしては単一グレードの茶葉を使用したプーアル茶です。
ここでいう単一グレードとは春摘みの小さな若芽となります。
昌泰のフラッグシップであり最高級茶でもある易昌號は野生樹にこだわり、また一言に若芽といっても大きさの異なる茶葉、すなわち風味の異なる茶葉をブレンドすることによってしっかりと味作りをしたプーアル茶である一方、庚辰記念餅は最高の茶葉を丁寧にプーアル茶として仕上げたというある意味シンプルなアプローチを持ったプーアル茶になります。
このプーアル茶は作られてから8年間の間広州の乾倉にて熟成されていました。
葉底を見る通り、茶葉は万遍なく色づき9年間の熟成を確かに感じさせられます。風味もしっかりと落ち着いていますが、もともと小さな若芽のみで作られたプーアル茶なので、まだはつらつさを感じさせる状態に仕上がっています。これは小さな茶葉は茶葉の隙間は小さくなり空気とのふれあいは制限されるため、その分茶葉の風味は抜けることなくそのおいしさを保つことができる為です。
葉底を見るととても丁寧に作られていることが一目瞭然です。、一芽二葉プーアル茶はほかにもありますが、それらと比べるとその作りの良さは際立ちます。とてもきれいな餅面、そして葉底。もちろん見た目だけではなく、その風味、香りといった茶葉の持つうまみも素晴らしいものがあります。
プーアル茶の解説で女性的であると紹介していますが、一つ一つの作りの丁寧さも女性的と評する理由になっています。とはいえ、解説の中で
易昌號を男性的とし、庚辰記念餅を女性的としているのはその味わいからです。
大ぶりの野生茶葉で作られた易昌號は熟成もよく進んでいて同じ2003年のものでもその風味は足し算的に豊かになっている一方、庚辰記念餅はその作りのため熟成が緩やかで、そのうまみは引き算的と言えます。引き算といっても物足りなくなっていくのではなく、雑味が取れてきているという表現が正しいでしょう。茶葉の芯にあるうまみは変わらず、とがっていた風味の角は取れまろやかに、そしてもともと強く主張していたであろう風味がおとなしくなった分、それまで隠れていた繊細な風味をよく感じられるようになってきました。そのためその風味は主張しすぎることはなく、重層的となりその複雑な風味が何とも上品さを醸し出しています。
以上のような風味の対比を男性と女性に例えて表現してみましたが、皆様のご評価はいかがでしょうか?
この先熟成が進むにつれて足し算の要素も出てきたときこのプーアル茶はまた違った表情を見せてくれるに違いありません。