プーアル茶の風味に煙味というものがあります。
この風味はその名の通り、スモークされいぶされたような風味となります。
その原因は二つあって、茶葉そのものの味わい、そして製茶の段階で茶葉に煙の風味が移ってしまうことにあります。
この風味が強すぎると新しいプーアル茶では癖が強すぎ、お口に合わない方もいらっしゃいます。
こういったときは蒸らす時間を短く、軽めに入れるとおいしくいただけます。
さて、新しいプーアル茶では邪魔となることもある煙味ですが、
年月がたちほどよくおさまってくるととてもいい風味となってきます。
当店のプーアル茶にもいくつも煙味をもつものがありますが、
開店当時はまだ強すぎた煙味も最近実にいい味を出すようになってきました。
たとえば
佛海銀毫餅は開店当時より人気の高い生茶ですが、最近その風味の良さを再認識しています。
雲南大葉種の力強い味わいとしっかりとバランスをとる心地よい煙味の風味。
これは煙味を持つプーアル茶にしかないものです。
他のいい例としては茗聞時謹製の易昌號である
龍シリーズがあります。
このシリーズには孟海、金竹、奇邦、蛮磚と4種類のプーアル茶がありますが、どれも最高級茶葉を使用したものですが、その味作りは異なります。
この中で孟海と奇邦を比べるとその風味は大きく異なります。
奇邦には煙見は全くなく、その香り、味わいともジューシーで甘く仕上げられています。
もともとの味作りが苦みを少なく作られているのですでに完熟(というと誤解があるかもしれませんが)の風味をもったプーアル茶となります。
それに対して孟海は退行してほどよい加減となった煙味をもちます。
このプーアル茶は苦みを残しドライにまとめ上げた味作りとなっています。
こういった味わいのなかでは、煙味は非常にいいアクセントになり特別な風味を醸し出しています。
まさに画竜点睛の存在感です。
このプーアル茶はまだ茶気を残しているので完熟までにはあと数年かかるかと思われますが、
熟成とともにもう一回り苦みが引いた時、そして老味がでてきたとき、その煙味と合わせてこのプーアル茶は非常に複雑な風味をもつプーアル茶に育つのではないかと期待しています。